兄弟の遺産を相続放棄するには?手続きや注意点を徹底解説

兄弟の遺産を相続放棄するには?手続きや注意点を徹底解説
三橋 伸男 税理士
監修 税理士法人アイユーコンサルティング 東京事務所/タックスコンサルティング部シニアスタッフ

三橋 伸男 税理士

20代前半で働きながら、法人税法、相続税法、所得税法の国税3法に合格。 資産税メインの個人会計事務所にて総資産5億円以上の相続税申告や不動産オーナーの節税対策をするとともに、当該資産家の資産管理会社も含めたトータル的なサポートを長期的に従事してきた。 2020年税理士法人アイユーコンサルティングに入社。 これまでの経験と国税3法に合格した知識を活かし、さらに株価対策、事業承継まで業務範囲を広げ、様々な業種の法人に対応できるよう尽力している。 また、相続税申告に携わる中で、相続がお客様にとって転機となることに気付き、お客様に応じた最善の対応ができるよう常に心掛けている。 持前の明るさを活かし、悩みに寄り沿いながらクライアントとの良好な関係を築くため業務に日々邁進している若手税理士。

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遺産を受け継ぐのは子や配偶者など「ごく近い関係性の親族だけ」だと思っている方もいるでしょう。しかし、兄弟が法定相続人として遺産を受け継ぐ権利を持つこともあります。ここでは、兄弟に相続権が発生する2つのケースと、相続時の注意点をご紹介します。

【ケース1】法定相続人が兄弟しかいない場合

法定相続人には相続順位があり、兄弟は、第1順位の「子」第2順位の「父母(直系尊属)」に次ぐ第3順位です。順位が最も高い方に相続権が発生するため、一般的には子や父母が相続しますが、該当者がいなければ兄弟に相続権が移ります。

なお、配偶者は常に法定相続人となるため、相続順位には関係ありません。子がいない夫婦や独身者で、父母がすでに他界している場合は兄弟に相続することになります。

【ケース2】他の相続人が全員相続放棄した場合

第1順位や第2順位に該当者がいるにもかかわらず、第3順位の兄弟に相続権が回ってくるケースもあります。代表的なのは、先の順位の法定相続人が全員相続放棄した場合です。

相続放棄は、その法定相続人は最初からいなかったと考える制度です。例えば子が2人(長男・次男)いて、長男が相続放棄したときは、次男が全ての遺産を相続します。しかし、次男も相続放棄した場合は、自動的に第2順位である父母が法定相続人になるという仕組みです。

兄弟が相続するときの注意点

第1順位、第2順位が相続放棄したことで相続権が移動するケースでは、知らない間に法定相続人になっている可能性があります。裁判所からそのような通知が来ることは基本的にないので、相続放棄した本人から知らされない限り、気付くきっかけがないでしょう。

また、兄弟は配偶者や子に比べ、遺産の内容を把握していないことが多いのが一般的です。遺産の中には借金があるかもしれないため、相続権があると分かったら遺産の調査を行いましょう。

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兄弟の遺産相続が発生したものの、相続放棄をしようか悩んでいる方もいるでしょう。借金などマイナスの財産が多く、相続をしたくないときは、思い切って相続放棄をするのも選択肢のひとつです。ここでは、相続放棄の具体的なメリットを3つご紹介します。

借金を返済しなくて済む

相続財産には預貯金や現金などプラスの財産だけでなく、借入金や未払い金なども含まれるため注意が必要です。プラス財産よりもマイナス財産のほうが多ければ、足りない分は相続する方の財産から弁済をすることになります。

相続放棄のメリットは、こうした負債を弁済する義務から解放されることです。相続放棄の申述が裁判所に認められれば、弁済の義務がないことを債権者にも報告できます。

相続トラブルに巻き込まれない

相続放棄をすれば、相続に関するトラブルに巻き込まれなくて済むのもメリットのひとつです。相続の現場では、「愛人との間に認知している子供がいた」といった想定外の事態や、「遺言の内容に納得できない」と憤る親族など、テレビドラマ顔負けのもめ事が生じることも珍しくありません。

相続放棄をすると、その法定相続人は初めから存在しなかったことになります。したがって、他の法定相続人と集まって相続割合を決める「遺産分割協議」にも参加する必要がありません。トラブルに巻き込まれたくないと思ったら、相続放棄を検討するとよいでしょう。

他の相続人に遺産を譲れる

他の相続人に遺産を譲りたいときにも相続放棄が有効です。例えば、「生前の兄を長年1人で看病してくれていた妹に全財産を譲りたい」といった希望があるときです。

相続放棄は個人で手続きできるので、兄弟のうち1人だけ相続放棄することも可能です。同順位の他の法定相続人には相続権が残ります。兄弟が4人いるケースで、そのうちの1人が相続放棄した場合は、残りの兄弟が3人で遺産を分割することになります。

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遺産内容に負債が多い場合でも、相続放棄をしないほうがよいケースもあるでしょう。ここでは、相続放棄のデメリットをご紹介します。メリット・デメリットをしっかりと比較し、自分のケースに合わせた相続方法を見つけることが大切です。

相続人同士のトラブルに発展する恐れがある

相続放棄は、他の法定相続人の同意がなくても個人単位で申述できます。そのため、兄弟の中で相続放棄した方としない方が混在しているケースでは、放棄しなかった方に相続の負担が全てのし掛かることになります。

例えば遺産総額がマイナス500万円で、兄・姉・弟の3兄弟のうち、兄と姉が相続放棄をすると、弟がマイナス500万円全額を相続する流れができあがります。弟も相続放棄を選ぶかは別として、きちんと意思疎通ができていないと兄弟間のトラブルに発展することは想像に難くありません。

甥や姪は代襲相続できない

法定相続人である兄弟が相続時にすでに亡くなっているケースでは、その兄弟の子(故人から見ると甥姪)が代わって相続できます。これを代襲相続と呼びます。しかし、相続放棄の申述が受理されると、その方は最初から存在しなかった扱いになり、甥や姪が代襲相続する権利も初めからなかったことになります。

このように、相続放棄は自分たちの問題だけでは済まない点が出てくることも理解して行う必要があります。

全ての財産を放棄することになる

相続放棄をすると一切の財産を相続できなくなることから、不動産など財産の一部に相続したいものがある際には適さない相続方法でしょう。マイナス財産もあるものの、相続したい財産があるときは、「限定承認」という方法が適しています。

なお、相続方法は原則、やり直しや取り消しができません。負債しかないと思っていた遺産のはずが、「きちんと調べるとプラスの財産で出てきた」という事例は実際にあります。後悔しないよう、目的に合致した相続方法を選びましょう。

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本当に相続放棄をしても問題ないのか、いざとなると悩んでしまう方もいるでしょう。相続方法は途中で変更できるものではないため、自身の状況をしっかりと把握した上で進めなければいけません。ここでは、相続放棄をするか決める際の判断基準をご紹介します。

プラスの財産とマイナスの財産を比較する

預貯金や不動産といったプラス財産よりも、ローンや未払い金などのマイナス財産が明らかに多いときは、相続放棄が適しているでしょう。また、被相続人が誰かの借金の保証人になっているケースも同様です。

まずは、被相続人の財産の内容をよく確認しましょう。プラス財産とマイナス財産の一例は、以下の通りです。

種類 内容
プラス財産 ・不動産
・預貯金、現金
・有価証券
・貸付金
・知的財産権
・家庭用財産 など
マイナス財産 ・借入金
・未払い金
・預かり保証金
・保証債務、連帯債務
・公租公課 など

相続したい財産の有無を検討する

マイナス財産のほうが多くても、「被相続人と同居していた家に住み続けたい」「事業用の財産は必要」といった理由があれば別です。被相続人の財産を確認し、相続したい財産があるかどうかを検討しましょう。

相続放棄は全ての財産を受け継がない相続方法です。住宅や自動車など被相続人と共同で使用していたものでも、名義が被相続人になっていれば手放す必要があります。特に相続財産に住宅が含まれているときは、新しい家を探すための時間や金銭的な余裕があるのか、じっくり考えたほうがよいでしょう。

限定承認を選択できるか判断する

限定承認は、プラス財産の範囲でマイナス財産を相殺する相続方法です。つまり、相続財産に負債のほうが多くても、自分の財産から借金を弁済する必要はありません。また、借金の弁済後に財産が残れば、その分は相続できます。

遺産の詳細が分からず相続方法を判断できないケースや、マイナス財産のほうが多いものの、自宅や事業所など手放したくない財産がある場合には、限定承認が適しているでしょう。

ただし、限定承認は手続きの難易度がやや高い点に注意が必要です。限定承認は相続放棄と異なり、相続人全員で申述します。また、申述期限は3か月以内で、その間に財産調査や必要書類の収集を終えなければ手続きを進められません。

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ここでは、申述場所や必要な書類、申述期限などをご紹介します。兄弟の遺産相続が発生し相続放棄を考えている方は、早めに準備を進めて申述しましょう。期限に間に合わないと、全ての遺産を相続する「単純承認」になってしまいます。

申述場所は家庭裁判所

相続放棄の申述先は、「被相続人の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所です。「法定相続人の住所地」ではないので、間違えないように気を付けましょう。

必要書類は裁判所の窓口に持参するか、郵送で提出します。なお、裁判所のホームページから、申述先の確認や申述書のダウンロードが可能です。

申述後、家庭裁判所から「相続放棄照会書」が届きます。手紙に記載のある質問に回答して、返送しましょう。無事に申述が受理されれば、「相続放棄申述受理通知書」が届きます。

申述期限は3か月以内

申述期限は、相続発生から3か月以内です。期限を超えてしまうと、自動的に単純承認したことになるので注意しましょう。基本的には被相続人が亡くなった日が起算日になりますが、上の順位の方が相続放棄したことで法定相続人になるときには、「相続放棄を知った日」が起算日になります。

兄弟は相続順位が第3位なので、子や父母が相続放棄したことで相続権が回ってくるまでには多少の時間がかかるでしょう。

申述に必要な書類

相続放棄の申述をする際には、提出が必要な書類がいくつかあります。相続順位や被相続人との関係性で必要書類は変わりますが、兄弟が相続放棄する場合に提出が必要な書類は以下の通りです。

・相続放棄の申述書(800円の収入印紙付き)
・郵便切手(金額は裁判所によって異なる)
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人の戸籍謄本
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)
・すでに死亡している被相続人の子(代襲相続人含む)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本

兄弟は、他の相続順位の法定相続人がすでに亡くなっていることを証明するために、たくさんの戸籍謄本を集める必要があります。また、代襲相続人である甥や姪が相続する際は、上記に加え「被相続人の兄弟である親の死亡に関する記載のある戸籍謄本」も合わせて提出します。

手続きにかかる費用

必要書類を集める費用や、申請に必要な収入印紙代など諸費用がかかります。目安は以下の通りです。

・収入印紙800円分
・郵便切手(金額は裁判所によって異なる)
・戸籍謄本1通につき450円程度

ただし、申述を弁護士に依頼する方は10~20万円程度の依頼費用がかかります。大きな出費になりますが、滞りなく申述を進めたい方や、相続に関する悩み事が他にもある場合は専門家に依頼するほうが早道です。

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相続では思わぬトラブルが起こることもあり、一般の方だけで解決するのは難しいケースがほとんどです。最終的にどのように対処するかは別として、まずは弁護士や税理士、司法書士といったその道のプロに相談してみてはいかがでしょうか。

アイユーコンサルティングは、相続を専門とする税理士のプロ集団です。弁護士や司法書士、行政書士といった専門家とも提携しているため、ワンストップで問題の解決ができます。

初回のご相談は無料で、平日夜や土日の他、ビデオ会議でのWeb面談も実施しています。相続税の申告期限1か月以内まで対応させていただきますので、期限が差し迫っている方も安心してお任せください。

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相続放棄は一切の財産を受け継がない方法です。マイナス財産を弁済する義務もなくなります。兄弟が多額の借金や連帯債務などを残して亡くなった際は、相続放棄も検討しましょう。ただし、相続放棄をすると他の法定相続人に迷惑がかかることもあります。手続きを進める際には、事前に報告しておくことが大事です。

相続に関してお困りのことがあれば、相続・承継案件のプロであるアイユーコンサルティングがお力になれます。他の士業とも密に連携しており、スピーディな問題解決が可能です。ご自宅からでもご相談可能なWEB相談も実施していますので、お気軽にご利用ください。

三橋 伸男 税理士
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