相続の単純承認はどんな制度?3つの相続方法と注意すべきケース

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相続の単純承認はどんな制度?3つの相続方法と注意すべきケース

財産を全て引き継ぐ相続方法を単純承認といいます。ただ、「単純承認」と聞いても詳しい内容までは想像が付かない方が多いのではないでしょうか。そこで今回は、単純承認の制度内容や基礎知識を詳しくご紹介します。

相続財産に負債が多い場合や、相続するか否かの判断が難しい場合などは、他の相続方法を選ぶのが一般的です。それらも含めて、相続方法全般についても解説します。

プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐのが、単純承認という相続方法です。日本の相続は原則的に単純承認なので、まずはこの方法の詳しい内容を知っておきましょう。他の相続方法である「限定承認」と「相続放棄」も併せて解説します。

相続の単純承認とは?

単純承認は、亡くなった方が所有していた全ての財産を相続する方法です。つまり、プラスの財産だけでなく借金も受けいれることになります。単純承認で相続する財産の一例は以下のとおりです。

プラス財産 ・預貯金:現金、通帳に預けたお金
・土地:宅地、山林、牧場
・建物:戸建て住宅、マンション、事業所
・有価証券:小切手、株式、国債
・債権:慰謝料請求権、第三者への貸付金債権
・知的財産権:著作権
・事業用財産:農具、機械
・家庭用財産:骨董品、自動車 など
マイナス財産 ・借入金:住宅ローン、クレジット残債務
・未払金:水道光熱費、医療費
・その他:保証金、所得税、固定資産税 など

なお、遺産総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算した基礎控除以下であれば、相続税はかかりません。

相続方法の決定は3か月以内が期限

相続が発生したことを知った日から3か月以内にアクションを取らなければ、自動的に単純承認したことになります。言い換えると、単純承認を選ぶなら特別な手続きをしなくても問題ありません。

3か月間は「熟慮期間」であり、その間に相続財産の洗い出しをして相続方法を決めます。後から新たに財産が出てきても、相続方法は1度決定したら基本的には変更できないので、確認漏れのないようにしましょう。

単純承認だけじゃない!3つの相続方法

遺産は必ず受け取らなければならないと認識している方も多いかもしれません。しかし実際には放棄もできます。

また、負債は多いが自宅など手放したくない財産もある場合は「限定承認」を選ぶのが有効です。負債が預貯金や不動産などの総額を上回る場合は相続放棄を選ぶのが一般的です。遺産の状況に合わせてベストな方法を選択しましょう。

実際にどのような状況になれば単純承認と判断されるのか、その決まりを詳しくご紹介します。遺産を全て受け継ぐつもりがなくても、行動によっては承認したと見なされるので注意しましょう。特に、相続財産に負債が多い場合は注意が必要です。

相続財産を処分した場合

相続財産の一部または全部を処分した場合は単純承認になります。これは、故人の遺産を「自分のもの」として扱ったという「意思表示」と認識されるためです。具体的には以下のケースが当てはまります。

・不動産の譲渡
・家屋の取り壊し
・株主権行使
・遺産分割協議
・預貯金の解約 など

どのような方法で相続するのか、きちんと決まってから処分しましょう。場合によっては相続人間でトラブルになります。

相続放棄や限定承認をしなかった場合

「相続放棄」や「限定承認」を選ぶなら3か月以内に手続きをする必要がありますが、何もしないで3か月が過ぎると自動的に単純承認を選択したことになります。

遺産の洗い出しに時間がかかっている場合、うっかり期限が過ぎると単純承認したことになるので注意しましょう。申述期限に間に合いそうにないなら、熟慮期間延長の申請をすることで一定期間延長できます。

相続財産を隠蔽・消費した場合

相続財産を故意に隠蔽したり、消費したりした場合も単純承認として見なされるため注意が必要です。また、財産があることを知っていて財産目録へ記載しなかった場合も、単純承認したことになります。

すでに相続放棄や限定承認の申請をしている場合でも同様です。財産の隠蔽や消費といった行為があれば、相続債権者という「借金や未払い金を返してもらう権利のある方」への背信行為となり、全ての財産を相続せざるを得なくなります。

単純承認になるケースとならないケースを、具体的な事例で確認しましょう。意図せず単純承認と見なされることがないよう、事前にさまざまなケースを把握しておくことが大事です。ここでは、よくある4つの事例でご紹介します。

生命保険金を受け取ったとき

例えば被相続人(亡くなった方)の父が本人にかけていた生命保険金で、受取人を子に指定していた場合、子はこれを受け取っても単純承認にはなりません。契約上、死亡保険金は受け取った本人固有の財産だと考えられるからです。

ただし、受取人が父本人になっている保険金を子が受け取った場合は、相続を承認したと見なされます。

葬儀費用を支払ったとき

「自分の葬式用に」と預貯金を残している方も少なくないでしょう。被相続人の遺産で葬式費用を捻出した場合、基本的には単純承認になりません。社会通念上必要な費用と考えられているためです。

ただし、中には葬式費用と称して遺産を処分する方もいるため、あまりに高額な場合は「財産を処分した可能性がある」と疑われ単純承認と見なされることもあります。一般的な常識の範囲内の金額であれば問題ないでしょう。

債務の弁済を行ったとき

被相続人に借金などがあり、被相続人の遺産を使って債務の弁済をすると単純承認になります。一方、法定相続人の預貯金などから弁済した場合は、基本的には単純承認になりません。「誰のお金か」というところが、単純承認に該当するかどうかを決める重要なポイントです。

ただし例外もあります。期限内に債務を弁済しなければ遅延損害金などが発生するようなケースでは、被相続人の財産から弁済をしても単純承認になるとは限りません。

形見分けとして遺品をもらったとき

亡くなった方が普段身に付けていたものや思い出の品などを受け取るときは、その価値によって単純承認か否かが決まるので注意が必要です。

手帳や衣服などを少しだけ持ち帰る分には単純承認にはなりませんが、高級ブランド品や骨董品などを受け継ぐ場合は単純承認したことになります。また、遺品を極端に多く持ち帰る場合も、単純承認と見なされる可能性があるので気を付けましょう。

単純承認になりにくいもの ・高価でない時計やアクセサリー
・よく着ていた服
・帽子や眼鏡 など
なりやすいもの ・ブランド物の時計やバッグ
・毛皮のコート など

遺産の内容をなかなか把握しきれない場合や、マイナス財産が多いもののどうしても手放せない財産もある場合には、限定承認という相続方法があります。

財産の洗い出しがしやすいケースでは単純承認でも問題ありませんが、実際にはそう簡単に判断できないこともあるでしょう。限定承認の内容も把握しておくことで、自分の状況に合わせた最善の方法を選択できます。

相続の限定承認とは?

限定承認とは、現金や預貯金などプラス財産の範囲でローンや未払金といったマイナス財産を相殺する相続方法です。負債を返済するため手元に残る財産は減るものの、自宅や事業所など手放せない財産や余った分の財産は相続できます。

そのため、限定承認すれば±0円が最低限度額です。一方、単純承認した場合、マイナス財産のほうが多ければ莫大な赤字になる可能性もあります。

限定承認の申述期限は3か月

限定承認は、相続が発生したことを知った日から3か月以内に申述が必要です。申述先は亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所になります。以下は申述の際に必要な書類です。

・申述書
・相続財産目録
・収入印紙800円
・被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人全員の戸籍謄本
・その他書類(法定相続人の関係性により異なる)

メリット・デメリット

限定承認のメリットは、未払金や借入金をプラス財産の範囲でしか返済しなくて済むことです。遺産の内容や金額がはっきりしない場合や、負債はあってもどうしても手放したくない財産があるケースでも役立つでしょう。

逆にデメリットは、みなし譲渡(被相続人が相続人へ時価で財産を売却したとみなされること)により譲渡所得税がかかり準確定申告が必要となる場合もあることと、手続きが複雑なことです。限定承認の手続きには1年~2年かかることもあり、専門家に依頼しないと難しいかもしれません。

限定承認がおすすめなケース

限定承認は判断が難しい部分があるため、相続方法を決める際には以下を参考にしてみてください。

・遺産総額がはっきりと分からない場合
・マイナス財産のほうが多いものの、手元に残したい財産もある場合

限定承認の手続きは複雑で時間がかかるなどデメリットも多く、慎重な判断が必要ですが、相続したい財産があるなら非常に合理的な方法です。

遺産の洗い出しをすると、想定以上に負債が多いことが分かるケースがあります。マイナスの財産が明らかに多く、その中に特別相続したい財産もなければ、いっそのこと相続放棄を考えましょう。ここでは、相続放棄の基礎知識をご紹介します。

相続放棄とは?

借金が多く遺産を受け継ぎたくないなら、相続を放棄することで支払義務がなくなります。相続放棄は、一切の財産を相続しない方法だからです。法定相続人同士で遺産の取り合いが起こりそうな場合や、誰かひとりの方に遺産を譲りたいといった場合にも、相続放棄は有効な手段といえます。

相続を放棄しても、基礎控除の計算式である「3,000万円+600万円×法定相続人の数」としてカウントは可能です。ただし、相続放棄をした法定相続人は「はじめから存在しなかった」ことになり、次の相続順位の方に権利が移動します。法定相続人の相続順位は以下のとおりです。

常に相続人 配偶者
1位 子(亡くなっている場合は孫)
2位 父母(亡くなっている場合は祖父母)
3位 兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪)
※法定相続人になる子の範囲と条件 ・養子:実子がいる場合は1人、いない場合は2人まで
・非摘出子:認知が必要
・胎児:特になし

相続放棄も申述期限は3か月

相続を放棄する場合の申述期限は、相続が発生したことを知った日から3か月です。亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所に申述する必要があります。相続放棄の場合は単独での申述が可能です。申述の際には以下の書類を用意しましょう。

・申述書
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人の戸籍謄本
・収入印紙800円分
・その他書類(法定相続人の関係性により異なる)

メリット・デメリット

相続放棄をすることで、未払金や借入金の返済義務がなくなるのは大きなメリットです。負債を背負って精神的に追い詰められることなく、ストレスや重圧などから解放されるでしょう。

ただし、相続順位が変動することになるので、想定外の方に相続の権利が移動し迷惑がかかる可能性もあります。また、相続放棄はやり直しができないので、慎重に判断しなければならない部分はデメリットといえるでしょう。

相続放棄がおすすめなケース

相続放棄は、一切の財産を相続したくないときに選択する相続方法です。具体的には、以下のようなケースで選ぶのが望ましいでしょう。

・借金や未払金など債務が多い場合
・相続させたい特定の人がいる場合
・法定相続人同士のトラブルに巻き込まれたくない場合

自宅や事業所など、引き継ぎたい財産が特にないのであれば相続放棄がベターだと考えられます。注意点は、1度申請すると撤回できない点です。判断が難しいと感じたら税理士に相談するとよいでしょう。

相続をすべきか放棄すべきかと悩んでいる方は少なくありません。アイユーコンサルティングにご相談いただいた方の中にも、次の事例がありました。

【事例】

相続財産 法定相続人 問題点
借金200万円 2人(Aさん・Bさん) 借金のみ

Aさんは被相続人が亡くなった後に借金があることを知り、いくらの負債があるかすぐには判断できません。相続放棄を選択しようか悩んでいますが、AさんとBさんが相続放棄をすれば、次の相続順位の親族を巻き込むことになります。

そこで、アイユーコンサルティングでは次の相続順位の方にも事前に説明し、了承を頂いた上でAさん・Bさんの相続放棄の手続きをしました。その後は順に相続順位の方の手続きを行い、相続放棄は完了です。しっかりと手順を組み手続きを進めたことで、相続トラブルの回避に成功しました。

相続方法を決めるのが難しいケースや、相続する財産の実態がつかめない場合は、専門知識と豊富な経験を持つアイユーコンサルティングの税理士にご相談ください。

遺産を全て相続する場合は単純承認になります。単純承認を選択するなら特別な手続きは必要ありません。ただ、相続するつもりでなくても、財産を処分したり隠蔽したりした場合には単純承認に見なされるケースもあります。

相続方法は単純承認だけでなく、限定承認や相続放棄も選択可能です。「どの相続方法がベストなのか」「相続放棄したいけれどやり方が分からない」とお悩みの方は、「アイユーコンサルティング」にお気軽にご相談ください。初回面談無料で承っています。

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