相続放棄のデメリットとは?|メリットや手続き方法も解説

相続放棄のデメリットとは?|メリットや手続き方法も解説
小林 俊彦 税理士
監修 税理士法人アイユーコンサルティング パートナー/東京事務所/副事務所長 兼 ミライサイクル事業部部長

小林 俊彦 税理士

大学院で核融合に関する研究に携わり理工学修士を取得。卒業後、西洋インテリアの販売に従事。ヨーロッパのインテリアの歴史や文化に精通する。 2012年、転職を機に福岡の中堅税理士法人に入社。不動産業・保険媒介代理業・製造業・卸売業・小売業・歯科医業などの顧問業務に従事。税務申告だけでなく、財務分析等を通じて経営者に寄り添ったアドバイスを心がける。 2018年より税理士法人アイユーコンサルティングに参画し、現在は、中堅・中小・ベンチャー企業の成長支援分野で、MAS監査を中心にクライアントの経営サポートに尽力している。特に2代目、3代目後継者の経営ノウハウの向上などを得意とする。 また、アイユーコンサルティングの新卒採用や若手従業員の指導育成にも力を注いでいる。

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相続は全ての財産を受け継ぐ「単純承認」が原則です。ただし民法では「相続放棄」によって、財産を受け継がない自由も認められています。また、条件付きで相続する方法が「限定承認」です。ここではそれぞれの相続方法について解説します。

相続放棄

「相続放棄」は、遺産を一切承継しない相続方法です。借金やローンなどのマイナスの財産が、預貯金や不動産といったプラスの財産を明らかに上回っている場合によく選ばれます。相続放棄は各相続人が行うかどうか判断でき、それぞれの都合に合わせた対応が可能です。相続を放棄した人は初めから法定相続人でなかったとして扱われます。

 

本来であれば自分が相続するはずだった財産は他の相続人間で分け合われ、相続権が自分の子どもへ引き継がれることもありません。なお相続放棄は、相続が開始してから3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

単純承認

相続人は、被相続人(亡くなった人)の資産・負債を全て承継することが民法上の原則です。これを「単純承認」と呼び、プラスの財産がマイナスの財産を明確に上回っている場合、あるいはマイナスの財産がゼロの場合に適しています。

 

単純承認をするための特別な手続きは必要ありません。相続放棄や、次で解説する「限定承認」の手続きをしなければ、自動的に単純承認したと見なされます。

限定承認

「限定承認」は、遺産がどの程度あるかはっきり分からない場合に適した相続方法です。プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続できるのが特徴で、相続をした結果、大きな負債を抱えてしまうリスクを防げます。

 

プラスの財産がマイナスの財産を上回っていれば、相殺して残った分を相続可能です。なお、限定承認を選択する場合は、相続開始から3ヵ月以内に相続人全員で家庭裁判所に申述する必要があります。

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相続できる資産を手放すことで損をすると感じる方もいるかもしれません。しかし、相続放棄にはメリットもあります。「親の借金を返済しなくてよくなる」「面倒な相続トラブルから解放される」「事業に必要な財産を事業承継者が集中して相続できる」などがその一例です。ここでは、それらの相続放棄のメリットについて詳しく解説します。

【相続放棄のメリット】親の借金を返済しなくてよい

相続放棄をすれば、親の借金を相続人が引き継いで返済する必要がなくなります。これを単純承認で相続すると、亡くなった人の資産だけでなく負債も引き継がなければなりません。

 

負債にはローンや借金の他、家賃や健康保険料の滞納による未払金も含まれるので、このような負債を全て返済する必要がなくなる点もメリットでしょう。

【相続放棄のメリット】相続トラブルから解放される

相続放棄することで相続人ではなくなると、「親の世話をしていたのだから多くもらうのは当然だ」「連絡の取れない兄弟がいて遺産分割協議が進まない」など、相続トラブルに巻き込まれなくて済みます。遺産分割協議や名義変更の手続きなど、相続にまつわる面倒ごとからも離れられるでしょう。

【相続放棄のメリット】事業に必要な財産を事業承継者が集中して取得できる

相続に伴い事業承継する場合、事業承継者以外の相続人が相続放棄をすることで、事業に必要な財産を事業承継者が集中して取得できます。事業承継者に資産を集中させることは遺産分割協議によっても可能ですが、銀行など金融機関から借金をしているケースでは相続放棄が選択肢に上がるでしょう。

 

会社が銀行から資金を借り入れる際、代表者が連帯保証人として契約書に署名するケースがほとんどです。連帯保証人として契約した債務は債務保証と呼ばれ、マイナスの財産として取り扱われます。

 

相続放棄をしない限り、債務保証は各相続人に相続されることになるので注意が必要です。この場合、事業承継者以外が相続放棄をすることで、債務保証をひとりに集中させる必要があるでしょう。

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「相続放棄のメリットは理解しているけれど、デメリットは把握していない」という方もいるのではないでしょうか。

 

相続放棄のデメリットは、「被相続人の財産を一切受け取れない」「一度相続放棄すると撤回できない」「元々相続人でなかった人が相続人となることがある」「家庭裁判所で手続きをしなければならない」ことです。それぞれのデメリットについて詳しく解説します。

【相続放棄のデメリット】被相続人の財産を一切受け取れない

相続放棄をした場合、亡くなった人の借金を返済する必要はありません。しかし、遺産に土地や建物などの不動産や預貯金があっても、相続を放棄しているので相続できません。相続放棄とは、文字通り相続に一切関わらないということです。

【相続放棄のデメリット】一度相続放棄をすると撤回できない

後になって資産が見つかった場合でも、一度相続放棄すると撤回できません。撤回に似たものとして「取消し」が認められるケースがありますが非常に限定的です。

 

「取消し」には、次のようなケースが挙げられます。

・未成年者が親権者等の同意を得ずにした相続放棄

・成年被後見人がした相続放棄

・詐欺や脅迫によってされた相続放棄

 

いずれにせよ相続放棄の取消しは家庭裁判所への申述が必要であり、簡単には行えません。相続放棄の判断は慎重に行いましょう。

【相続放棄のデメリット】元々相続人でなかった人が相続人となることがある

同じ立場の法定相続人全員が相続放棄をすると、次順位の親族が法定相続人となることに注意が必要です。例えば夫が亡くなり、妻と子が法定相続人の場合で、子が相続放棄をすると第二順位の直系尊属(夫の両親や祖父母)が法定相続人となります。

 

特にマイナスの財産が多い場合は要注意です。法定相続人である親族が負債を相続しないためには、配偶者や子だけではなく第二順位の親や第三順位の兄弟姉妹の全員が相続を放棄する必要があります。

【相続放棄のデメリット】家庭裁判所で手続きをしなければならない

相続放棄をするには、家庭裁判所での手続きが必須です。自分で手続きをする場合は、申述書を作成し、戸籍などの必要書類と合わせて家庭裁判所に提出します。このような手間がかかる他、自分で行う場合は数千円、弁護士などの専門家に依頼する場合は数万円の費用がかかる点もデメリットといえるでしょう。

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自分では相続放棄していると思っていても法的な効力がなかったり、相続放棄をしようと思っていたら単純承認と見なされてしまったりと、相続放棄をする際には気を付けたほうがよい点がいくつかあります。ここでは、主な相続放棄の注意点をまとめました。

遺産分割協議で財産を受け取らなくても相続放棄にはならない

遺産分割協議とは、相続人の間で遺産を誰が相続するか取り決めるものです。借金などの負債がある場合には、遺産分割協議の結果について、借入先に法的な効力を持って主張できるわけではありません。

 

たとえ遺産分割協議の結果、財産を受け取らなくても、法的には「相続放棄」とは認められません。相続放棄の際は忘れずに家庭裁判所で手続きを行いましょう。

相続放棄をするのなら「法定単純承認」に気を付ける

何もせずに3か月の熟慮期間を経過してしまうと、単純承認と見なされるのが民法上のルールです。3か月というと長く感じるかもしれませんが、葬儀や四十九日法要などの行事をこなすうちに期限切れになることも想定できます。

 

また、相続財産を売却するなどして遺産を処分した場合も単純承認の扱いです。隠匿・消費などの背信行為をした場合も、同じく単純承認と見なされます。

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相続放棄の手続きをする際には、定められた期限内に戸籍謄本などの書類を裁判所に提出する必要があります。相続放棄が裁判所に認められた場合、相続放棄したことを対外的に証明できる書類を取得しておくと安心です。

相続放棄手続きの必要書類

相続放棄の申述では、さまざまな書類を収集して家庭裁判所に提出しなければなりません。以下は、申述人が誰であっても必要になる書類です(申述人によって必要となる書類は変わります)。

 

・相続放棄申述書

・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

・申述人(相続放棄する者)の戸籍謄本

 

書類の提出先はどこの家庭裁判所でもよいわけではなく、被相続人の「最後の住所地の家庭裁判所」でなければいけません。提出方法は家庭裁判所に持参または郵送によって行えますが、郵送の場合には届いたことを確認するため追跡することをおすすめします。

 

(参考: 『相続の放棄の申述|裁判所』

相続放棄手続きの期限

相続開始から3か月が経過するまでは、「単純承認」「相続放棄」「限定承認」のうちどの方法によって相続をするのか相続人が選択できます。この判断するための期間が「熟慮期間」です。

 

なお相続開始後、熟慮期間が経過しないうちであれば期間伸長の申立てができます。「遺産を調査するのに時間がかかる」などの理由が裁判所に認められれば、熟慮期間の伸長が可能です。

相続放棄手続き後にやること

相続放棄の申述が受理されたことを証明する書類が「相続放棄申述受理証明書」です。この証明書を発行しておくことで、相続登記を行うときや返済請求を受けたときに役立ちます。

 

相続登記では、被相続人から相続放棄した者以外の相続人へ名義変更をするために、相続放棄申述受理証明書が必要です。また相続放棄申述受理証明書は、被相続人の債権者から借金の返済請求を受けた場合にも、相続放棄をしたことを証明する書類として利用できます。

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相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」ですが、相続放棄があった場合でも基礎控除額の計算上、相続放棄はなかったものと見なし金額は変わりません。仮に4人の法定相続人のうち2人が相続放棄した場合でも、基礎控除額は「3,000万円+600万円×4=5,400万円」です。

 

「相続放棄をしたいけれど基礎控除額が減って他の相続人に迷惑がかかる」といった心配は不要といえるでしょう。

相続放棄についてお悩みの方は、お気軽にアイユーコンサルティングにご相談ください。相続案件を多数手掛ける経験豊富なプロがそろっており、お客様ひとりひとりに合わせたご提案が可能です。ここでは、アイユーコンサルティングの強みをいくつかご紹介します。

 

・ご相談内容に適した専門家をご紹介可能

相続を得意とする弁護士や司法書士と提携をしており、相続手続きをワンストップで解決するお手伝いができます。

 

・戸籍取得・名義変更手続きの代行サービス

日頃忙しく戸籍謄本などの資料を取りに行く時間がない場合に、関連会社にて戸籍取得・名義変更手続きの代行サービスのご紹介が可能です。

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相続放棄は、マイナスの資産がプラスの資産を明らかに上回るケースに適している方法です。「親の借金を返済する必要がなくなる」などのメリットがある一方で、「一度相続放棄すると撤回できない」「他の親族に法定相続人の権利が移るケースがある」などのデメリットもあります。

 

デメリットによって損することのないように、本当に相続放棄することが好ましいのか、専門家に相談してみるのもひとつの方法です。アイユーコンサルティングでは初回無料で相続に関する相談を承っています。ぜひご活用ください。

小林 俊彦 税理士
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