安心して相続税申告を行うための「書面添付制度」とは?AI時代の税務調査への備え方

こんにちは。税理士法人を母体に中小企業・資産家向けにサービスを展開するアイユーコンサルティンググループです。

今回は、国税庁が公表した「相続税の調査状況」をもとに、AI時代の相続税調査の現状と、安心して申告するための「書面添付制度」について解説します。


 

相続税調査は「量から質」へ。AI導入で選ばれる申告が変わる

「やっと申告を終えたけれど、本当に大丈夫だろうか…」

相続税の申告後にこうした不安を抱える方は少なくありません。実際、相続税は他の税目に比べて税務調査が入りやすく、毎年多くの申告内容がチェックされています。

近年は調査件数よりも「調査の質」が重視され、1件あたりの確認内容がより精緻になっているのが特徴です。

平成26年度には約12,000件だった実地調査が、令和5年度には約8,500件に減少しました。一方で、相続税の申告件数は約5.6万件から15.5万件へと約3倍に増加。課税割合も4.4%から9.9%に上昇し、今や10人に1人が申告を行う時代となっています。

その背景には、平成27年の基礎控除額引き下げがあります。

「5,000万円+1,000万円×法定相続人」から「3,000万円+600万円×法定相続人」へと縮小されたことで、都市部を中心に申告対象者が大幅に増加しました。

結果として、納税者数は約13万人から34万人へ、課税価格は114兆円から216兆円へ、税額も約1.4兆円から3兆円へと拡大。

調査が行われた場合の「申告ミスの発見率」は84%に達し、1件あたりの追徴税額も859万円と増加しています。

つまり、相続税調査は「件数をこなす」時代から「選ばれた申告を徹底的に調べる」時代へ移行しているのです。


 

AI分析「KSK2」による選定精度の向上


調査の精度が高まっている最大の理由は、AIによるデータ分析の進化です。

国税庁では「KSK2(新国税総合管理システム)」を導入し、相続税の申告データや財産債務調書、保険金の支払調書、海外送金データなどを横断的に分析。申告内容から「リスクの高いケース」をAIが自動的に抽出します。

これにより、従来の「調査官の勘」による判断から、客観的なデータスコアによる選定へと変化。

すでに令和7年から一部AI分析が始まっており、調査件数は減少しながらも追徴課税額は増加しています。

いまや税務調査は「AIが選ぶ」時代。

これからの相続税申告には、“後から説明する”ではなく、“最初から説明できる”ことが求められます。


書面添付制度とは?──「説明できる申告」を形にする仕組み

AIによる分析精度が高まるなかで注目されているのが、「書面添付制度」です。

これは税理士が作成した申告書に、どのような資料を確認し、どのような考え方で評価・計算を行ったかを記載した書面を添付する制度です。

たとえば、「妻名義の預金は被相続人の収入を原資としており、贈与の事実がないため被相続人の財産に含めた」といった根拠を明示。

これにより、税務署は判断の背景を正確に理解でき、結果として調査のリスクを軽減できます。

書面添付がある申告の場合、税務署はすぐに実地調査に入るのではなく、まず税理士への「意見聴取」を行います。

この段階で疑問点が解消されれば、相続人が直接対応する必要はありません。

つまり、書面添付制度は「調査を止めるための制度」ではなく、「説明の機会を先に設ける制度」といえます。


書面添付制度の普及とメリット

国税庁の資料によると、相続税申告における書面添付の割合は令和5年度で24.3%。

所得税や法人税よりも高く、相続税分野ではすでに一般的な制度として定着しつつあります。

書面添付制度のメリットは、単に調査リスクを減らすだけではありません。

意見聴取の段階で修正を行えば、過少申告加算税(10〜15%)が原則として課されない点も重要です。

つまり、誤りが見つかっても、早期対応によって“ペナルティを最小限に抑えられる”可能性が高まるのです。


アイユーコンサルティングの取り組み

アイユーコンサルティンググループでは、相続税申告において書面添付制度を積極的に採用しています。

申告に必要な資料の確認、財産評価の根拠整理、特例適用の可否判断までを徹底し、どのような質問にも自信を持って説明できる“見える申告書”を作成します。

また、一次相続だけでなく、二次相続を見据えた試算や、将来の資産構成を踏まえた税負担の軽減策も提案。

専門チームが評価・調査対応まで一貫してサポートする体制を整えています。

AIが税務の世界に本格的に入る今だからこそ、「見られても安心な申告」を整えることが大切です。

書面添付は、その第一歩となる仕組みです。


まとめ

相続税調査は、AIの導入によって「数から質」へと進化しています。

データ分析が進む一方で、最も重視されるのは“人の判断に基づいた説明の整合性”です。

書面添付制度は、相続人にとっても税務署にとっても「信頼される申告」を実現する有効な手段。

不安を感じたときは、専門家に早めに相談し、安心できる申告準備を整えましょう。

相続税の申告・生前対策のご相談は、アイユーコンサルティンググループへお気軽にお問い合わせください。

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